「俗物の反対は何だろう」。最近、そんなことを考えました。
損得や世間の評価ばかりを気にする人の反対なら、「超俗的な人」や「求道者」という言葉が近いのかもしれません。
けれど私は、仕事やお金、責任のある生活を捨て、精神的なことだけを追い求めたいわけではありません。私たちが生きていくためには、気が進まなくても、やらなければならないことがあります。
同時に、それだけに追われていたら、自分の体や心が発している小さな声を聞き逃してしまうとも感じています。
プロギングには、現実から離れるためではなく、現実を生きる自分自身へ戻るための時間という側面があるのではないでしょうか。
「体と心の声を聞く」という生き方

先日、片岡鶴太郎さんがヨガについて語る動画を見ました。
片岡さんは、瞑想への関心を入り口にヨガを知り、長年続けているそうです。お話を聞きながら私の中に残ったのは、誰かにどう見られるかよりも、自分の体と心が何を求めているのかを確かめる姿勢でした。
これは片岡さんの言葉をそのまま引用したものではなく、私がそのお話から受け取った感覚です。
私たちは日々、外から届く多くの声に囲まれています。
- もっと働いたほうがいい
- 今のうちにやっておいたほうがいい
- 周りと同じようにしなければならない
- 休んでいる場合ではない
もちろん、こうした現実的な判断が必要な場面はあります。しかし、外側の声だけを聞き続けていると、「今日は少し疲れている」「本当は静かな時間がほしい」「今やっていることを心から望んでいるだろうか」という内側の声は、次第に聞こえにくくなります。
体と心の声を聞くとは、すべての気分に従うことではありません。まず今の自分の状態に気づき、そのうえで何をするかを選び直すことだと思います。
プロギングは「動く瞑想」になり得る

プロギングは、ヨガや瞑想そのものではありません。けれど、身体を動かしながら「今ここ」に意識を戻すという点には、通じるものがあると感じます。
歩く。走る。呼吸する。足元を見る。ごみを見つけたら立ち止まり、腰を落として拾う。
目的地へ急ぐいつもの移動では見過ごしてしまう感覚が、プロギングでは少しずつ戻ってきます。
体の声
今日は足取りが軽いのか、重いのか。呼吸は心地よいのか、無理をしているのか。速く走ることを目的にしなければ、その日の自分に合うペースを選べます。
心の声
誰かと話したいのか、一人で静かに歩きたいのか。ごみを一つ拾ったとき、少し気持ちが動いたのか。答えを急がず、自分の反応を感じられます。
街の声
いつもは車で通り過ぎる道にも、季節の変化や人の暮らしがあります。どこにごみが多いのか、どんな景色が心地よいのか。足元を見ることで、自分だけでなく、暮らしている街の状態にも気づきます。
プロギング静岡についての代表あいさつには、「忙しい日常の中で、立ち止まって足元を見る」と記しています。プロギングは、先へ進むために、あえて一度立ち止まる運動でもあるのだと思います。
以前の記事では、スマートフォンや情報から少し離れ、自分を取り戻す時間としてプロギングとマインドフル・リカバリーを紹介しました。今回はさらにその奥にある、「自分はどう生きたいのか」という問いについて考えています。
現実を生きながら、内側の声も置き去りにしない

お金を稼ぐことも、責任を果たすことも、決して俗悪なことではありません。大切な人や自分の生活を守るために必要なことです。
一方で、体と心の声を無視し続けることも、健やかな現実とは言えないでしょう。
大切なのは、現実か精神性かの二者択一ではなく、両方を行き来できることだと思います。
| 現実の声 | 内側から聞こえる声 | バランスの取り方の例 |
|---|---|---|
| 今日中に終えたい仕事がある | 少し疲れて集中が切れている | 10分だけ外を歩いてから戻る |
| 収入や成果も大切にしたい | 意味を感じられる時間もほしい | 週に一度、地域のために体を動かす |
| 周囲に合わせる必要がある | 今日は自分のペースで過ごしたい | 走らず、歩くプロギングを選ぶ |
| 情報を追っておきたい | 頭を静かにしたい | 活動中だけスマートフォンをしまう |
体や心の声は、必ず従わなければならない命令ではなく、今の自分を知るための大切な知らせです。聞いたうえで、現実と折り合いをつけながら次の行動を決めればいい。
プロギングを始める前と後に、次の問いを自分へ向けてみるのもおすすめです。
プロギング前後の小さなセルフチェック
始める前
- 今日の体は、軽いですか。それとも少し休みたがっていますか。
- 今、心の中を一番占めているものは何ですか。
- 今日は、どのくらいのペースなら心地よく動けそうですか。
終わった後
- 呼吸や気分に、どんな変化がありましたか。
- 自分や街について、新しく気づいたことはありましたか。
- 今日、家まで持ち帰らなくてもよい考えはありますか。
答えが見つからなくても構いません。問いを持って歩くこと自体が、自分の内側へ戻るきっかけになります。
プロギングと心身についてのよくある質問
プロギングはヨガや瞑想と同じものですか?
同じものではありません。プロギングは、ごみ拾いとジョギングやウォーキングを組み合わせた活動です。ただし、呼吸、足取り、周囲の景色など、目の前の感覚へ意識を向けやすい点では、「動く瞑想」のように感じられることがあります。
走らなければ意味がありませんか?
走る必要はありません。地域プロギングイベントは、ウォーキングに近いゆっくりしたペースを基本としています。その日の体調に合わせ、できる範囲で参加してください。
一人で行ってもよいですか?
一人で自分のペースを感じる時間にも、仲間と声を掛け合う時間にも、それぞれ良さがあります。プロギング静岡のイベントは、一人での初参加も歓迎しています。
心身の不調を改善する方法として使えますか?
プロギングは医療や治療の代わりではありません。体や心の不調が続くときは、無理に運動せず、必要に応じて医療機関や専門家へ相談してください。
まずは一度、足元を見る時間を
毎日の責任をすべて手放す必要はありません。特別な修行を始める必要もありません。
ほんの少し外へ出て、自分のペースで歩き、足元のごみを一つ拾ってみる。その短い時間の中で、体は何を感じ、心は何を思うのか。
現実を大切にしながら、内側の声も置き去りにしない。そのバランスを確かめる時間として、プロギングを楽しんでもらえたらうれしいです。
参加者の感じ方や活動後の変化については、プロギング静岡のウェルビーイング調査でも紹介しています。